VOL.1で明らかになった旧decollo デッコーロシャツの分析結果と、VOL.3の日本人男性のシャツ動向リサーチ結果をもとに、長所はより向上させ、短所は完全に改善させるために、日本の各メーカーと素材開発に取り組み始めました。

まずはじめに、旧decollo デッコーロの素材(コットン55%・ポリエステル45%)を、全く同じ繊維・組成・糸番手・ゲージ・度詰め具合で試編みしてみました。

その理由は、全く同じものを実際に作ってみて、日本と中国の両国でどのような差が出るのか、改めて比較してみたかったのです。ものを作るということは面白いもので、ものづくりに関わる技術者・使用する機械・作業工程・管理体制など、、、挙げたらキリがありませんが、様々な細い部分の違いで最終的に仕上がりが変わってくるのです。ましては、国の違いがあるなら尚更のこと。それは、歴史や文化・考え方・環境などが全く違いますし、細かく言えば、空気や使用する水・電力までもが異なります。仮に、海外で環境整備し、日本から技術者や機械、原料を送り込んで同じ製造方法で作ってみても、やっぱり仕上がりが変わってきます。編地分析すると同じものなのに、何かが違うんですね。感覚的に何かが。

私達は、ものづくりをする上で、言葉で語れないこの「感覚」というものをとても大事にしており、今回のリニューアルするdecollouomo デッコーロウォモのシャツには、その感覚的なものを随所に取り込んでいきました。

旧decollo デッコーロシャツ素材を日本メーカーで試編みした編地

出来上がった旧decollo デッコーロシャツ素材の試編み見本を確認してみると、やっぱり違いますね。さすが世界に誇るメイドインジャパンの総合力の高さ。中国製の編地と比べると、一見同じもののように見えますが、編み地の目の美しさと形状安定性が良く、綺麗に整った表情、日本らしい編地になりました。旧decollo デッコーロの素材を日本で製造するとこの編地になる。という基本がわかりましたので、ここからが本題のリニューアル。どのようにアップグレードしていくか考えていきます。

繊維の選定

良質な糸で機能性に優れているもの。ただ、良い糸を追求するだけで品質が向上するわけではありません。繊維同士の相性もありますし、それらを組み合わせることで発揮される機能性の具合や、仕上がりの風合いも千差満別です。また、組み合わせる割合や使用する糸番手、編み方によっても大きく変わってくるのです。

まずは、ポリエステル繊維の機能性強化

機能性化学繊維には効果別に沢山の種類があり、より最先端の機能性を求めて多くの国内外メーカーが開発を続けています。

吸水速乾・接触冷感・清涼・調湿・吸放湿性・UVカット・遮熱・防透け・保温・発熱・蓄熱・ストレッチ性・軽量・消臭・抗菌防臭・制菌・抗ウイルス・透湿防水・撥水・防炎・難燃・制電・形態安定性・美容・保湿・PHコントロール・防汚・ノンアレルゲン・花粉対策・防ダニ・防カビ・防虫など、年間を通して必要な機能をもった様々な機能性化学繊維が存在します。

単純に欲張って考えると、全ての機能性を盛り込みたいと思いがちですが、仮に全種類の原糸を束ねて撚れたとしても、それぞれの割合がとても少なくなるので、それらの効果が十分発揮されなくなります。また、コスト高で大量な製造ロットが必要になるので、わざわざ機能が発揮されない糸を、高いコストで大量に作るという全く無意味なことになってしまいますね。

同じ機能をもった機能性化学繊維を各メーカーがそれぞれ開発しているので、1つ1つを確認していくと膨大な種類になるのですが、それらを隈無く調べながらベストなものを精査していきました。

機能性長繊維ポリエステル「CEO α - セオアルファ」

デッコーロウォモのシャツに必要なポリエステルは、吸水速乾/吸放湿性/形状安定性/防シワ性で、旧decollo デッコーロよりも機能性が高いもの。吸水速乾・防シワ性などは以前から効果がありましたが、長期着用分析の結果では、形状安定性がイマイチで編み地が徐々にヨレてきたり、吸放湿性が低く蒸れてしまうこともありました。そこで今回のリニューアルでは、吸水速乾/防シワ性などイージーケアの強化。形状安定性による生地の縮み(寸法変化率)の低下。吸放湿性による常にドライで快適な服内環境の調整。に焦点を絞りました。

そこで今回新しく採用した繊維は、TORAY社が開発した機能性長繊維ポリエステル「CEO α – セオアルファ」です。
フィラメント1本1本が、まるで植物の茎のように優れた毛細血管現象能力を持っており、コットン以上に素早い吸水・吸汗性能/発散性能を発揮する水はけの良い繊維です。独特の構造が肌のベトつきを防ぎ、服内湿度を調整し、常に快適で心地良いさらさらのドライ感を持続させます。また、糸の収縮も少なく、防シワ性などイージーケアに優れている素晴らしい機能も併せ持っています。

次はポリエステル繊維と混合するコットンの選定です。
旧decollo デッコーロのシャツで使用していたコットンは、柔らかさを追求して甘撚りの糸を使用していたこともあり、着用〜洗濯を繰り返すうちに、毛羽立ちやピリングが気になっていました。今回のリニューアルでは、機能性長繊維ポリエステル「CEO α – セオアルファ」の機能を邪魔しないもので、毛羽立ちも少ない上質な長繊維コットンを選定します。

そこで、今回新しく採用した繊維は、世界三大高級綿で有名な工ジプト綿や海島綿(シーアイランドコットン)と同じランクと評される「Pima Cotton – ピマ・コットン」です。

Pima Cotton - ピマ・コットン

ピマ・コットンは、エジプト綿とアメリ力綿との異種交配によって作られた長繊維コットンで、繊維長が通常28.6ミリから38.1ミリと、一般的なコットンの2〜3倍長く、シルクのような光沢感とソフトでしなやかな風合いをもつ高級コットンの1つです。また、まるで漂白したかのように真っ白いコットンなので、染め上がりがクリアで発色の綺麗な色になります。

*シルクのような独特の美しい艶
*吸水性と耐久性に優れている
*しっとりと柔らかく、しなやかな肌触り
*毛羽立ちにくく、毛玉にもなりにくい

これで、ポリエステルとコットンの繊維は選定しましたが、今回のリニューアルでは、更に品質と風合いを追求していきます。長期着用分析結果でもありました通り、旧decollo デッコーロ素材の短所である「表情がカジュアルライクすぎて、ビジネス向けにはフォーマル感が足りない」を改善します。そして、長所をより向上させるために、もう1繊維を追加することにしました。

最後に、ポリエステル繊維とコットンに混合する繊維はモダール

「CEO α – セオアルファ」と「Pima Cotton – ピマ・コットン」の特性を活かし、品質を更に向上させるために今回選定したのは、オーストリアのレンチング社が開発した「Lenzing Modal – レンチング・モダール」です。

Lenzing Modal - レンチング・モダール

レンチング・モダールは、ブナの木を原材料として製造されたレーヨンの一種で、とろみのある最高の柔らかさを実現した繊維です。コットンの2倍の柔らかさを持ち、シルクのような艶と、素肌感覚の滑らかな肌触りが最大の特徴です。また、静電気が起こりにくく、肌と編地の間に空気の層を作ることで、服内温度を一定に保つ機能も併せ持っています。

*肌触りの滑らかさ
*吸湿・放湿性に優れている
*シルクのような光沢で発色が良い
*シワになりにくく、糸が縮みにくい
*水に濡れた時の強度が強くなる
*静電気が起こりにくい

今回のdecollouomo デッコーロウォモのリニューアルでは、機能性長繊維ポリエステル「CEO α – セオアルファ」・高級長繊維コットン「Pima Cotton – ピマ・コットン」・森のシルク「Lenzing Modal – レンチング・モダール」の3種類の繊維を採用することに決定しました。

次の段階では、それぞれの糸番手の太さ、さまざまな編み方を試して、一番適正な編地を開発していきます。

Translate »